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学校に1400冊寄付の「おじさん」、児童書に

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山形県鶴岡市の旧羽黒第四小学校(2016年3月閉校)に42年間、「本の購入代金に充ててください」と、現金を寄付し続けた男性がいた。男性は長い間、名前を明かさず、姿も現さなかったが、子供たちは「おじさん」と慕い、感謝の気持ちを忘れることはなかった。そんな男性と子供たちの心温まる交流の実話が児童書になった。作品を手掛けた童話作家は「多くの人の協力で誕生した渾身こんしんの一作。地域の温かさを伝えたい」と話している。

 児童書は「大好き! おじさん文庫」。上山市出身の童話作家・深山みやまさくらさん(59)(埼玉県在住)が児童らへの取材を重ね、作品にまとめた。

「おじさん」は若い頃、地区の青年部のキャンプで同小を訪れた際、古びた本が二つの本棚に並べられているだけで、図書室らしい図書室がないことを知った。

 「これじゃ、子どもたちがかわいそうだなあ」

 自分が卒業した小学校には図書室があったが、ぜんぜん本を読まなかった。社会人になって知らないことが多すぎて苦労したことを思いだし、「子どものとき、もっと本を読んでいたら!」と後悔する場面からストーリーは始まる。

同小に差出人の名前がない封筒が届いたのは1974年4月のこと。中には千円札が2枚入っていた。添えられた手紙には、自身が育英資金を借りて高校を卒業できたことから、「社会から受けたご恩に、少しでもむくいたい」と書かれていた。

 それから毎月、現金や図書券が届いた。「寒くなって、野外遊びもできなくなりましたが、その分、本をたくさん読んで勉強してくださいね」。子供たちを気遣う手紙も必ず添えられていた。

 子供たちは、まだ見ぬおじさんへの思いを募らせ、寄付金で購入した本の背表紙に赤いシールを貼り、「おじさん文庫」として大切に読み継いだ。また毎年、「おじさんまつり」を開き、おじさん宛てに書いた手紙や、想像で描いた似顔絵を貼り出すなどして感謝の気持ちを表してきた。

      ◇

 だが、少子化で2016年3月での閉校が決まった。それを知ったおじさんは“一つの区切り”と、名前を明かす手紙を送った。

 おじさんは、旧羽黒町(現鶴岡市)出身で仙台市在住の金野こんの昭治しょうじさん(71)。

 子供たちはその年の演劇会とおじさんまつりに金野さんを招待した。親子2代にわたっておじさん文庫の本を読んで育った人もおり、金野さんとの初対面に涙を流す人もいたという。

 金野さんが送った本の代金は220万円を超え、購入した本も約1400冊、手紙は501通に上った。

 童話作家の深山さんが、小学校に保管されていたおじさんからの手紙や、当時の子供と学校関係者に丹念に取材し、作品にまとめた。

 金野さんにも取材を依頼したが一度は断られた。だが、「金野さんなしに話は成り立たない」と、作品への思いを手紙にしたためるなど何度もお願いし、金野さんから「熱意におされた」と、取材の快諾を得ることができたという。

 金野さんは、深山さんに送った手紙の中で作品について、「(私の)小さな発想から素晴らしい1冊の本が出来あがるとは夢にも思っていませんでした。おじさんに対する(子供たちの)心情がほのぼのとしていて、温かさや思いやりの大切さが伝わってきます」とつづり、喜んでいるという。

 深山さんは08年に「かえるのじいさまとあめんぼおはな」で「ひろすけ童話賞」を受賞した作家で、単行本は今作で27冊目。深山さんは「金野さんの長年の行いの素晴らしさはもちろん、それを受け止め、感謝の気持ちを抱き続けた子供たちとの心の通い合いに着目して読んでほしい」と話す。

 文研出版(東京都)から出版され、全国の書店で販売されている。

引用先:https://www.yomiuri.co.jp/culture/20180930-OYT1T50198.html

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